この曲はソウルミュージックなので、慣れない俺には、ちょっと大変だ。
《風の行方》は、テジュンとケントがKYUの歌声に併せて、交互にハモっていくというパターンだ。
3番の歌詞は、3人でサビの部分を歌い、KYUが主旋律を、テジュンが低音、ケントが高音のパートを担当する。
ハジケたパンクミュージックだから、ノリが良い分、ブレスのタイミングが重要になってくる。
多分、本堂さんに10何回かはダメ出しされるんだろうなぁ。
《スポットライト》は、俺とジョージが交互に、KYUの歌声にハモりを入れる。
この曲は、1番はKYUが一人で歌い、2番の歌詞は俺とジョージが交互にハモりながらKYUと一緒に歌うんだ。
3番の歌詞はハモり無しだが、KYUとXYZのメンバー全員で大熱唱するんだ。
翌朝は、皆7時にはもう全員目を覚まし、バケットのガーリックトーストとコーンスープで朝食を済ませた。
ちょっと早いけど、原宿スタジオにやって来た。
が、さすがに9時前にはスタジオが開いていなかった。
しばらく表の駐車場で日向ぼっこをしながらダベっていたら、シン(天道新)がバイクに乗ってやって来た。
「シン、いつもとやって来る方向が逆だね!
どっか行ってたの?」
『彼女ん家で泊まってたんだ。』
「そう言えば、彼女が出来たって言ってたな!
そろそろ紹介しろよな!?」
『あぁ!』
「俺のカンだけど、たぶん俺達の知っている子だろう!?」
『……何で…。』
「カンだって言ったろ!
可愛いのか!?」
『メチャクチャ可愛いし、優しい子だ!』
「そっかぁ。
会うのが今から楽しみだよ!」
『じゃあ、スタジオを開けるから。』
と言って、正面のシャッターを上げて、中のガラス扉の鍵を開けて、中に入って行った。
「俺達も中に入ろうぜ!?」
『おぅ!』
ベースメントスタジオに降りて行き、扉を開けて中に入った。
ソファーに座って自販機で買った缶コーヒーを飲みながら、目を綴じて今日レコーディングする3曲のメロディーを1音ずつ思い返していく。
特にソウルミュージックの《チョンチョニ カジャ》は、前半部分がスローテンポで、後半部分がアップテンポになっているから、速度に気を付けていかないといけない。



