『小谷社長が逃げた噂が流れた途端、下請けの建築業者も、工事をほっぽりだして、ここの工事は、頓挫(とんざ)してしまったんだよ。

うちの社長も、困ってしまい、半年くらいは、放置状態だったんだ。

2億4千万円も騙し盗られたんだから、仕方ないよなぁ。』


「アボジ(親父)、良くそんな大金持っていたな!」


『そりゃ、韓国本社じゃあ、新星MUSICのタレント達が頑張って働いてくれてるからなぁ。

その上、カラオケボックスのチェーン展開で、大当たりしたから。

その当時……、チャンス君が中学生の頃かな、僕がチャンス君と出会ったのは。』


「そうですね!

アボジ(親父)から、新しい店舗の責任者として引き抜いてきたって言って、紹介してくれたのが中2の夏でした。」


『そうそう、暑い日中、チャンス君が友達とプールに行くからって時に、僕がチャンス君家にお邪魔したんだよな。』


「そうでしたね。」


『あの頃、新星グループの中で、芸能部門の他に、スタジオ経営やカラオケボックスの経営の他にも、踊る方のクラブの経営や、ライブハウスの経営、オンデマンドの音楽配信や通信カラオケの設置等を、ドンドン多角的に手を拡げて行ったんだ。

バブルが弾けても、新星グループには全く関係無かったって言っても過言では無いくらいの勢いだったから。』


「凄いですねぇ。

自分の父親ながら、商売に関しては驚くばかりです。」


『でもね、多角経営していたからと言って、現金がゴロゴロしていたって訳じゃ無いんだよ。

銀行での数字上では、お金は常に出たり入ったりで、数億円口座に入っていても、毎月10日には従業員の給料でアッと言う間に無くなっているし、そうかと思えば、その1週間後には印税が数億円入っているとかね!』


「まぁ、それが企業なんですからね。」


『そう。

だから、突然2億4千万円もの大金を無くして仕舞うと、会社としては大打撃なんだよ。』


「そうなんだ…。」


『そんな時に、助けてくれたのが金光社長なんだよ。

金光住建は、韓国に地盤が出来ていて、かなりの資産家でもある金光社長だからこそ、ここのビルも完成させられたんだよ。』


「と言うと!?」


『金光社長は、骨組みだけのこのビルを、全て計測し直して、この骨組みに合うビルの設計をしたんだ。』