海沿いの国道を、都内に向けて車を走らせていた。


お店を出発して30分ほど走ったところに、綺麗なホテルが見えてきた。


「ヒカルちゃん、あの白いホテルで良いかな!?」


『ダメだよ。

ケントさんはXYZのメンバーだから、顔を知られているんだよ!

万が一、パパラッチされたら、バンドの皆に迷惑かけちゃうじゃない。』


「そっかぁ。

じゃあ、俺のマンションに来るかい!?

古くて安っぽいマンションだけど、一人暮らし始めたんだ。

一応、地下に駐車場があって、そっから一気にエレベーターで上がれる様になってるから、誰にも見られないよ。」


『行きた~い。

ケントさんのマンションが良い。』


「じゃあ、決まり。
少し時間かかるから、眠たかったら寝てて良いよ!」


『嫌だよ~!

たまにしか会えないのに、寝たら勿体無いよ!』


「そうだよな。」


と言う事になって、俺はチャンスのマンションから、10分ほど離れた本郷一丁目に在る、賃貸マンションに向けて車を走らせた。


『着いたよ。』


「エ~ッ!

いつの間にか寝ちゃったよ~!」


『可愛い寝顔だったよ!』


「もう、ケントさんのイジワル!

起こしてくれたら良いのに!」


『あまりにも気持ち良さそうに寝てたから、可哀想になって起こせなかったんだよ。』


と、話ながらエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。


「ケントさん、8階に住んでいるんだ。」


『まぁ、あんまり下の階だと、ひょっと変なファンが登って来ても困るし、覗かれたくないからな!』


「大変なんだね!」


『さぁ、着いたよ。

ようこそ!俺の城へ!

って言うほど、大した事ないけどな!』


「外観はちょっぴり古くさい感じだけど、中は案外綺麗なのね!

2LDKなんですね!

でも、フローリングのリビングが広くて、その上カウンターキッチンが素敵!」


『お風呂が広くてゆったりと入れるんだぜ。

だから、ここに決めたんだ。』


「これで、お家賃幾らなんですか?」


『8万円と、共益費が5千円、駐車場が1万5千円。

で、合計したら、丁度10万円だから、安い方じゃないかなぁ!?』


「だよね!

リビングだって20畳ほど有るし、ドレッサータイプの洗面台もあって、部屋は…こっちは8畳有るんだ‥‥‥‥。