俺がアボジの実家に戻って来たのは、夕方過ぎ。



台所からは、テンジャンチゲの良い匂いが漂ってきた。


その後すぐにジソンヒョンニムも帰って来た。



「お帰りなさいヒョンニム!」


『オゥ、ただいま!
チャンスはいつ帰って来たんだ!?』


「俺もたった今帰って来たところです。」


『そっかぁ。

ところでチャンス、お前に頼みが有るんだけど良いかなぁ?』


「俺が出来る事だったら何でも良いですよ!」


『実はなぁ、俺も今年から社会人だろ。
コモ(叔父さん)の会社で働く訳だから、日本語覚えといて損は無いだろう。』


「ヒョン(アニキ)は、アボジの会社で営業やるんですか?」


『まだ分かんないけど……いずれはプロデュースしてみたいよなぁ。』


「ですよね!ヒョンは音楽センス抜群だし、アーティストとしてやっていけるくらいですよ!」


『チャンス、芸能界は、そんなに甘い世界じゃないぞ!』


「そっすかぁ!?

日本にBig ●angってグループが来てたけど、大したこと無かったッスよ!」


『バかだなぁ。まだデビューしたばかりのグループが、いきなり日本に行って、その上、 李●憲とも共演したんだぜ。

彼等の親は、韓国じゃかなり影響力のある人間だから、そういうバックボーンがないと、この世界はキツいぜ。

まぁ、実力が有れば別だけどな!』


「マジかよ!?

じゃあ、ヒョンは実力もコネも有るから、ダイジョブですよね!?」


『俺は、タレントやアーティストに成るよりも、裏方の方が向いてるんだよ。

俺は人前やカメラの前で作り笑いなんか絶対嫌だから。』


「へ!?

…………


そんな理由?」


『悪いかよ?

おべんちゃら言うのなんか最悪だから。』


「まぁ、ヒョンなら分かる気がする。」


『と言う訳だから、今日からお前が日本に帰るまで、宜しくお願いな!

お礼は、……
そうだなぁ……

●AINの直筆サイン入りのギターが有るんだけど、それ遣るよ!
ギターも彼が昔ライブん時に使ってたやつだぜ。』



マジ? マ...マジ


あれ、メチャクチャ欲しかったんだよなぁ。

アボジが貰ったんだよなぁー。それをジソンヒョンニムが貰ってたんだ。

こりゃ頑張って教えるしかないな!




…………