「ちょ、ちょっと待って」
意識しだすと、もうだめだった。
必用に迫る男の舌。
当たる度に悪寒のはしるピアス。
……あたしはバカだ。
「…やめっ…」
肩を押し返しても、びくともしない。
それどころか行為はエスカレートしていく。
気持ち悪い。
「…ってぇ…」
あたしは男の足をヒールで踏んだ。
さすがに痛かった様で、唇が離れる。
「やめてっていってるじゃない」
あたしが退くと男は距離をつめてきた。
所詮、力では適わずに、また引き寄せられる。
「今更純情ぶんなや」
男は唸るように呟いて、もう一度唇を合わせた。
強引で荒々しいキス。
波多野は絶対しないようなキス。
ああもう。
苛々する。
どうしてあんな、欲のない波多野のキスが、恋しいんだろう。
「!!」
あたしは男の舌を噛んだ。
血の味がした。
怯んだ男を突き放すと、一目散に出口に向かう。
会いたい。
波多野に。
今すぐに!
あたしは走った。
行き先なんて、なかったけれど。
それでも、走った。


