ねえ、なんで不機嫌だったのよ?
アンタ、あたしなんかどうでもいいはずでしょう?
あたしが男の人と遊ぶのなんか、なんとも思わないでしょう?
なんでよ。
やめてよ。
「波多野……」
「なに」
「キスして」
期待するじゃん。
あたしは波多野の手を両手で包んで、優しく退けた。
そのままヤツの首に手をまわす。
綺麗な綺麗な瞳が、あたしを見ていた。
ぞくり。
あたしはその芳香に、酔わされる。
「してよ、キス…」
そう言うと、珍しく波多野からキスをしてくれた。
ちゅ、とリップ音だけしてすぐに離れてしまったけど。
「足りない」
あたしはそう呟いて、熱い唇に噛み付くようにキスをする。
足りない。
足りないよ。
もっと欲しい。
「んっ…」
いつもより強引に舌を入れると、波多野もそれに応えてくれた。
いつも消極的な波多野の舌が、うねるようにあたしをかき乱す。
漏れた吐息はお互いの熱で、憂いを帯びる。
もっと。
もっと。
そう思う自分と、
やめて。
拒んで。
そう願う自分がいて、あたしの頭はぐちゃぐちゃだった。
波多野から与えられる熱に浮かされる。
いとしいよ。
とっても。
このキスがいつまでも続けばいいに。
ああ、波多野。
アンタが愛しくてたまらない。
アンタが、憎くてたまらない。
「…殺してやりたい」
「リカ…?」
「殺してやりたいくらい、好きよ。波多野」
あたしはもう一度波多野の唇に噛み付いた。


