「別に嫌いじゃねえよ」
頭の上で、そんな声が聞こえたと思ったら、そのまま体に衝撃がきた。
何かと思って顔を上げようとするが、首が動かない。
あ、波多野の手だこれ。
頭に大きな波多野の手が置かれていた。
あたしは反射的にそれに自分の手を伸ばす。
泣きそうだった。
なんで、突き放さないの。
アンタ、昔からそうだ。
なびかない。
そんなのはわかっている。
けど、突き放しもしない。
もっと傷つけて、立ち上がれないくらいにしてくれればいいのに。
あたしなんか、めんどくさいんだから、捨ててしまえばいいのに。
人に頓着しないアンタなら、そんなこと容易いでしょう。
お願いだ。
突き放して。
あたしを。
「波多野…」
声が、震えた。
ここまでしつこくアンタを追ってこれたのは、あたしが気の長い人間だったんじゃなくて、波多野のせいだ。
少しずつ、少しずつあたしに蜜を与えて、
それが毒だったことに今更気付かされる。
お願いだ。
あたしなんか、いらないって言ってよ。
「リカが嫌いなわけじゃない」
やめてよ。
突き放せよ。
「…悪いのは、俺」
ぼろぼろと涙が落ちる。
悔しい。
悔しくてしょうがない。
やっぱり、わかっているんじゃない。
やっぱり、好きだよ。
どうにもならない。
そうやって、波多野は知らないうちにあたしにトドメを刺す。
好きだ。
憎たらしいくらいに。
「……バカ」
擦れた声で呟いた。


