いつから波多野の背を追うようになったのだろう。
気が付けば、アイツばっか見ていた。
高校のときから。
あたしだって、それなりの恋愛経験はあった。
でもその中の、どんな男とも違う。
その背中を見ると、追いたくて追いたくてしょうがなくなる。
その唇を見ると、キスしたくなる。
こんな感情は、初めてだ。
固執する理由なんて、それだけで十分じゃない。
「……リカ、不毛だよ」
まだ何かを言いたそうなチカは、ぐいっとジョッキを煽った。
それに習ってあたしも黄金の液体を胃に流し込む。
不意に、ヤナギくんが喋りだした。
「リカちゃん」
「?」
「波多野は、臆病な奴だよ」
「…どういうこと?」
今までヤナギくんが波多野のことをこんなふうに言ったことはあっただろうか。
あたしは彼の表情を伺う。
けれど、そこにあるのはいつもと変わらない爽やかな笑顔。
「そのままの意味だよ」
「わかんないよ」
「だからさ、リカちゃんは見捨てないであげてよ」
あたしはますますわからなくて、頭を悩ませる。
波多野は、臆病。
だったら、あたしが包んであげる。
あたしが守ってあげるからさ。
不毛だなんて、そんなことない。
あたしには存在意義があるって、アンタが言ってくれさえすれば。
あたしは不毛なんかじゃない。
「あたしが、波多野を見捨てるなんてこと、あるわけないよ」
あたしがそう言うと、ヤナギくんは「頼もしいね」と笑った。


