「これで満足?」




開かれた薄い唇からは、なんとも冷たい言葉が出た。




あたしはよくわからなくて、呆然とする。



ちらりとあたしを見た波多野は、興味を無くしたように背を向けた。

鍵を閉めて、何も言わずに歩きだす。



あたしはその後ろ姿を、睨むように見つめていた。




この頃から、波多野はむかつく男だった。


唯一、あたしの期待を真っ向から裏切るような、男。



そんな人間に出会ったのは、あたしにとっては初めてで困惑した。


それと同時に酷く興味を持ったのだ。









波多野。


なんでだろう。



あたしはアンタがこんなにわからないのに。


アンタはあたしをずぶずぶとのめり込ませていった。




ピンポイントで、あたしの弱点ばっかり狙って。






高校3年でようやく波多野と同じクラスになった。



あの日からちょくちょく波多野にちょっかいを出しにいっていたけど、これだけ毎日。

それも、こんな近くで見るとなると、あたしの心もはね上がった。

相変わらず奴には相手にされなかったけど。






その頃からだ。




あたしが波多野に触れたいと思うようになったのは。