『あーんた誰ぇ?』




その時だった。



あたしの気配に気付いて目を覚ました女は、呂律も回らないような口調のままあたしにそう聞いてきた。




『誰って…あなたこそ誰なんですか?』




取り乱しちゃだめだ。


冷静にならなきゃだめ。




あたしは溢れてくる怒りの感情を必死で抑えながらそう返事をした。





『はぁー?ねぇ!光ちゃーん、なんか変な女がいるんだけどぉー』




立ち尽くしていたあたしを横目に、女は光輝を揺さぶった。




『んー?』




光輝もまだ酔っているような口調でそう言いながら目を開けると、立ち尽くすあたしに気付いてすぐに起き上がった。




『お前なにしてんだよ?実家に帰ったんだろ?勝手に自分から出て行ったくせに帰ってくんなよ』




八日ぶりに聞いた光輝の言葉。


それはすごく冷たくて。


とても酷いものに聞こえてきた。





『光ちゃん誰なのこの子?前の彼女?』





派手な顔のこの女は、あたしを見ながら光輝にそう聞いていた。



キツイ香水の匂いとアルコールの匂い。


部屋中に篭るそんな匂いに、あたしは息がつまりそうだった。