色恋なんてなくたって、もっと接客を磨けば…

男としてだけじゃなくて。

一人の人間としてもっと好きになってもらえるはずなのに…





『つーかさ。俺は杏奈のことが一番大切で……お前がそばにいてくれたらそれだけでいいんだ。だから仕事の話はもう終わり。それより杏奈もうすぐ誕生日だろ?』


『うん……』




光輝は話を逸らすように、約一ヶ月後のあたしの誕生日に話題をすり替えていた。




『俺仕事休むからさ。杏奈の行きたいとこどこでも連れてってやるよ』


『うん……』




嬉しいはずなのに…

なんか素直に喜べなくて。



そんなあたしの表情に気付いた光輝は、なんだか気を使うようにわざと明るく振る舞っているように見えた。




『昼間は杏奈の行きたいとこ片っ端から回ってさ。夜はすっげー夜景の綺麗な店で食事とかして。その日はスイートとか泊まっちゃったり?とりあえず杏奈は欲しいもの考えといて。なっ?』


『あぁ……うん』




欲しいもの…?


今ふと考えても全く何も思い付かない。



あたしの…

欲しいもの……