でもなんか…立ち止まってしまって。


ルイの歩いていく後ろ姿を、あたしは振り返って見つめていた。





『アン?』



そんなあたしに、勇二くんが不思議そうに声をかけたから。


あたし達は前に行ったあの居酒屋へと向かった。




『光輝大丈夫だった?』


『あー…。今多分忙しい時間帯でしょ?だから何も連絡してないよ。勇二くんだし光輝も別に心配しないと思うから』



『へぇー。俺って結構安全パイだと思われてるんだ』



なんか小さな声で、そう言ったように聞こえた気がした。



安全パイって…何?




『でもさ、アン超変わったよなぁ。どんどん綺麗になっていくし、指名も入って一ヶ月ちょっとなのにガンガン取れてリピーターもすげーじゃん』




“アン”―――。



そういえば…

勇二くんは、いつからだろう?


あたしをそう呼ぶようになっていて。



でも、綺麗になったとか頑張ってるとか。


いつもあたしを褒めてくれる勇二くんは、あたしをいつもいい気分にさせてくれてた。



だって光輝は、絶対にそんなこと言ってくれなかったから。


化粧がケバくなったとか、
ドレスなんて似合ないとか。


なんかそんなそんな屁理屈ばっかり。



まぁ、お店の代表の勇二くんは、うまくあたしをノセてくれて、気分よく仕事ができるように言ってくれてるだけだと思うけど。


でも、

女の子って、そういう何気ない褒め言葉で変われたり嬉しくなったりするんだよね。