多種多様な人種が行き交う街灯が燈った町並みの中、同じ言葉で通じ合える事。
 それは何よりも、幼い少女にとっては救いだったのだろう。
 手を取り、一つの傘の下に少年と収まった女の子は、涙を堪えて聞く。

「 名前は、なんて言うの? 」
 少年は、女の子へと顔を向け、胸元から名前の刻印されたアルミプレートの付くネックレスを引っ張り出した。
 それを誇らしげに少女に見せた少年は、力強く言う。


「 僕の名前はロキ 」

「 ロキさ! 」
 彼は、名前を名乗った。
 そして少女へと聞き返す。

「 君の名前は? 」
 雨と涙に濡れた顔を 手の平で拭った少女は小さく口を開く。

「 ミキ 」

「 私の名前は、藤林 美樹 だよ 」