「怖かったんさ。自分独りだと思ったら。本物はあんたさ。試合の度に敵を圧倒し、ここまで来た」
ちゃんと、ここまで迎えに来た。
「このオーブ。これはキーだよ。ちゃんと戻って来られるように、神様がくれた大切な……」
だから、しっかり持てよな、と差し出す。
ふと、エヴがその手の中をのぞき込むと、エラルドに強く引き寄せられて、瞳をのぞき込まれた。そのまま顔を近づけてくるから、エヴはつかまえられてる反対の方の手で何度も頬を叩く。それでも。
キス……されてしまった……。
(な……なんか、痺れるような)
額に。ちょっと温もりが残っている。
エヴは憤慨した。
「怖いのはあなただけじゃないんだ……か、ら……」
必死に胸で呼吸して睨み上げる。
エラルドは笑った。
「怖い? このオレが、勇者エヴァンジェリンといて、怯えると思うのか?」



