「これでひとつ武器ができたわね……エラルドのおかげだけど……いやん、めんどっちい。貸しは良いけど借りはなあ。しかもエラルド」
「心付けてーどでホテルのスイートまるまる使っておいて。ねーえ? ほんとにこのまま最下層まで行く気?」
エラルドがそう言ったとき。地下一階目から女の声がした。
『嫌ーっ やめてええー、あっ……うんっ、むぐっ、ぅうう~』
「あ、サッキュバスがさえずってら」
エヴは思わず脱力しそうになった。
「あのねえ、あれはインキュバスに『おそわれてる』女亡者でしょ!」
しかしエラルドは切り返した。
「あ~全然だね。拒絶するのも淫魔の手管さ。そして被害者面して精気を吸い取る。何度でも。だけどこりないんだよね~男の方も」
「へ、へぇえー、く、詳しい……のね」
(そんなことばっかし)
とは思うものの、図書館がよいの常連だったエラルドの知識は得がたい武器だ。特に、ここ地獄界という未知の世界では。



