ライフ オア デスティニー




 その子供は話を聞きながら、ひとの心を読むように懸命に口を開いた。



「エヴは兵器じゃない。だからこそ一緒に戦える。エヴの辛(つら)いことをひきうけてあげられる。エヴのこきょうを守ってあげられる。僕のふかい、ねむりのむこうで、いつかエヴがそうしてくれたように」



 ふるる、と頭を振って彼は元能天使(パワーズ)長に言った。



「わかるんだ。僕エヴに会ったことがある。知っているんだ。言いたいことがある……本当に一緒にいた。この思い出は消えないって」



 他の子供達はほとんど意味がわからず、ぽかんとしていたが、オン爺だけは深く深く頷いて、両の目から涙して静かに頬を湿らせた。彼が共感できるものが確かに届けられたのだ。

 子供の名前はサイレス。本当の翼もまだ生えない子供だ。特別扱いされるでもなく純粋で素朴な仲間達との情に満たされて彼は大きくなるだろう。