―すぐかえる―

 夜の瞳のアパートは静かだった。
「ありがとう。すばらしい効果だったわ。だってあなたを見るなり飛び出してゆくんだもの」
 瞳はキャベツの千切りを山と盛った皿を押し入れに運んだ。
 ほどきもしなかった荷は着払いで実家に送り返す。以前から用意はしていた。
「あねさん、妹さんが嫌いだったんだねえ」
「そうかしら。そうかもしれない。けれど離れて暮らしている分には構わないのよ」
「まあ、事情は聞かないことにして、夏場に押し入れはつらい。玄関に移してくれんかの。もとのとおりに」
「ええ、お供えのお水のことも安心して」
 しかるに、えりは二度と再び都会へは出てこないようになった。
「この顔見たら、すぐカエル、ってね」