同じひとを知っている。と、リヒトはちょっと、眉根をひそめた。 「話せば短いが口にするのは抵抗がある」 「要するに一言で言うと?」 「兄貴のお仕着せ。まあ、借り物だな」 「自分のは? 予備とかねーの?」 ないのよ。あるとすればジャージくらいだ。 「それが後ろの裾がほつれたらしくて。自分じゃわからないんで繕ってもらってるとこ。その代わりこの短ラン着てろって言われた」