すると、奥の方からするすると箱が降りてきて、華奢な手がすっとそれを勧めて言った。 「まったくの売れ残りだから、言い値でいいよ」 そのままひっこもうとする手をとり、リヒトはすがるように言いつのった。 「あっ、おきれいなお嬢様! ごめんなさい。ぼく、お財布持ってくるの、忘れちゃいました。確かに持って出たのに。取りに帰っている間に小鳥のように飛んでいったり、なさいませんよね、とっても急いで来たので、ぼく落としてしまったのかも」 「……いくらならあるのだね」