大切なもの…〜cherry tree〜

 


ドアを開けると、
焦げ臭い匂いは強くなり、
足音を立てないようにリビングへ向かった。


でもリビングには、
人影はなく煙が充満している。


目を細めながらキッチンへ向かうと、
そこにはフライパンを持ったケントの姿が見えた。


『ケント!?』


真奈が声をかけると、
ケントは一瞬動きを止めてこっちを向いた。


「火事じゃないから」


力が抜けるような事を言うので、


『わかってます』


真奈は力無く言った。