大切なもの…〜cherry tree〜

 


駐車場にケントの車がないのを確認し、
玄関の前に立った瞬間、


「おかえり」


聞き覚えのある声。


見上げると、
ケントが顔を出していた。


真奈は上を見ながら鍵を開け、
立ち上がるケントに言った。


『何でおるん?』


「行くって言ったやん」


真奈はケントを睨み、


『二度と真奈の目の前に現れんといて!』


と言った後、すぐに家に入った。


「真奈!!」


微かに聞こえるケントの声を、
CDの音楽で消した。


もう…


会いにこないで…



辛くて…


苦しくて…






ガラスのように


粉々に砕けそう…