大切なもの…〜cherry tree〜

 

家とは逆の方へ歩き、
中道がないので小走りで進む。


指輪が無くなった薬指は、
少し軽い気がした。


『懐かしい…』


着いた場所は、
前住んでいた家の前の公園。


ベンチに座り、桜の木を見上げた。


枝の間から星が見えて、心が安らぐ。


星を見ながら、
達也君の言った言葉を思い出した。


【ずっと真奈の側におった】


『遊び人…』


ふと出た言葉。


自然に涙が溢れ、
流れないように堪える。


でも
涙は自然に流れるもの…