大切なもの…〜cherry tree〜

 


床拭きが終わり、
雑巾を洗う為に部屋を出ようとした時、
誰かが先にドアを開けた。


開かれたドアから見えたのは、
目を真っ赤にした優子だった。


泣いて腫れた瞼。


優子は、真奈を睨んで見た。


優子の後に達也君が
申し訳なさそうに立って
いた。


ケントが戻って来た瞬間、


ーバチン!


静まりかえった部屋に響く音。


真奈は頬をおさえ、
ケントは部屋の前に立つ優子を
力ずくで引き離し、真奈を抱きしめた。


取り乱す優子を達也君が
部屋へ戻そうとする。


それでも優子は、
真奈に向かって叫んだ。