大切なもの…〜cherry tree〜

 


『恥ずかしいとこ見られてもたな』


真奈は潤んだ目を、
ケントに隠すように言った。



「母親がする事と思えん…」


ケントは震えていた。

怒りからか、悔しさからかはわからない。


『真奈はもう慣れとるから』


ケントから離れ、笑って言った。


「真奈はそんな細い体して、1人で乗り越えてきたんやな」


『ご飯食べる?』


真奈が話を変えるように言うとケントは頷いた。


キッチンへ向かいご飯が炊けてるか見た。


『あ!!スイッチ入れるの忘れた!』


ケントはキッチンに入り、真奈を
後ろから抱きしめた。


「真奈も失敗するんやな」


『失礼な!』


2人は笑った。


さっきの出来事を忘れるように。