大切なもの…〜cherry tree〜

 


「ここ出て男と住むわけ?」


母親は火がついたタバコを真奈に投げ付けた。


『あんたにやる金なんかないわ』


真奈は立ち上がって言った。


冷静なケントは真奈の横に座り、
床に落ちたタバコを灰皿に
押し消し消す。


「慰謝料…10万で許したろ」

母親の言葉でケントは、
冷静じゃなくなり立ち上がると、
母親の胸倉を掴んだ。


『ケント!!』


真奈は、財布からお金を取り
母親に投げ付けた。


ケントの手が汚れないように。


「真奈!?」


『やるから2度と目の前に現れるな…』


母親は一枚残らず拾い、


「ちょうど。んじゃさいなら!!」


と言って出て行った。


出て行く時の母親の顔…


今までに見た事がない程、
嬉しそうに笑っていた。



ケントは何も言わず、
真奈を優しく抱きしめた。