「まぁいい、お前はここで俺に殺されるんだ」
 
 そう言い終わる前に神山はナイフをこちらめがけて突き出してきた。とっさに身をよじるも、胸のあたりをナイフがかすめ上着を切り裂いた。

「つっ!」

 こちらの呻きなど気にすることもなく、神山はナイフを振り下ろしてきた。腕でかばうが右腕に鋭い痛みが走る。

「どうした寺内、死ぬのが怖いか?」

 そう言う神山の顔に気味の悪い笑みが浮かんだ。

「なぜ、俺を殺そうとする?」

「理由ねぇ…そうだな、お前が気に入らないってのはどうだ?」

「そんな…そんな理由で殺すのか?」

「ふん、そんな理由なんてどうでも良い」

「狂ってる…」

「そうだな…狂ってるかもなっ!」

 そう言うとナイフを振り上げて斬りかかってくる。それをよけようとした俺は突然足下が無くなるのを感じた。必死に何かを掴んだが頼りなく急速に落下していく。よける事に必死で崖から足を滑らしたのだ。