ひっぱっていた手はまだ彼女の温もりを残していた。


1度元樹を捕らえると彼女は彼に優しく話しかける。


「何か、言われた?」


と。


彼は黙り込んでしまった。


彼女は何か悟ったのだろうか。


男子のほうに向いた。


横から見ていた俺には見えた。


いつもニコニコしていた彼女の信じがたい表情だった。


いつものふんわりとしたあの笑顔がない。


それどころか優しそうな瞳がない。