そうだ、父だ……。
所々、せきをしてる。
父の体調が悪くなってから、録音されたものなのかな?
父の息づかいが、感じられる。
表情や仕草は、もちろん見えない。
でも、写真よりもなぜか、リアルに感じる。
すごく、物凄く近くにいるかのように。
「これからも、ずっと、ずっと一緒にいたいけど、いられないのが悔しくて……
悔しくてたまらない……
本当にごめん」
涙声がくぐもって聞こえてくる。
私も父と、ずっと一緒に生きていたかった。
「ちょっと遠くに行って来ます……なんか、暗く……
なっちゃったな……
ここで一曲歌います。
ハッピーバースディトゥーユー……♪♪♪
ハッピ……バースディ……♪♪♪
トゥユー♪…
ハッピーバースディディ……ア」
父は最後、咳き込んでしまっていて、そこで録音は途切れてしまっていた。
何かが鋭く父の体を、突き刺しているかのように感じた。
父が必死に歌っていたのが伝わってきた。父の熱い想いが、私の心にこみ上げ涙がこぼれた。



