私の反らした視線の先には、ボロボロな幾つかの大きな穴と、無数の小さな穴の開いたタイヤが見えた。
しばらくして、私はまた了を見つめた。
了は黙ったまま、じっと私を見つめ返した。
それは憎しみと、悲しみに満ちた瞳だった。
「あんた、夏季の財布とったでしょ?」
江利は了の目の前に、立ちはだかって言った。
「何? 何の話?」
ほんとに、何もしてないみたいな言い方だ。
「私見たの。
あの日あんたが、女子更衣室からこそこそと出て行くとこ」
「見ただけだろ!
証拠は?
それだけで、何でそんなこと僕がしなきゃなんないのか、わかんないんだけど」
すごく、余裕の表情を浮かべてる。



