手にしているのは真新しいリード。まろ君が訳のわからない結び方でつながれている。彼は特別何が起こったかと言うことには無頓着で、まもる君はまろ君の奪還ストーリーに酔いしれていたとみえ、その頬に幾筋もの涙の跡が描かれていた。
「さあやねえちゃん、ほんと? 出不精は?」
急いで私は頷いた。
「でも私はデブ症じゃないからね」
呼ばれてみて気付いたが、私は自分の名前を他者の口から、聞くことがほとんどなかった。「清花(さやか)」という名を「さあや」と呼ぶのはほぼ中学校のときの、クラスメイトのきょうだいか知り合い。
だけど今まで誰も、私を呼ばなかった。私も、誰のことも……赤面。こんなことで気付くなんて。なんて情けないんだろう。
ママのばか。病院から帰ったら、ああやちゃんて呼んでやるんだから。
母の名は「彩花(あやか)」。だから、「ああや」。
私たち、名前だけは似てるよね。ママ。それとも似せてくれたのかな。パパが? それともママが? ああ、もっと知りたい、自分のこと。聞いてみたい、産まれる前のこと。
まだあったことのない家族のこと。おじいちゃんやおばあちゃん……
話してみたい。
これから新しく一家に加わるまろ君のことも。
「さあやねえちゃん、ほんと? 出不精は?」
急いで私は頷いた。
「でも私はデブ症じゃないからね」
呼ばれてみて気付いたが、私は自分の名前を他者の口から、聞くことがほとんどなかった。「清花(さやか)」という名を「さあや」と呼ぶのはほぼ中学校のときの、クラスメイトのきょうだいか知り合い。
だけど今まで誰も、私を呼ばなかった。私も、誰のことも……赤面。こんなことで気付くなんて。なんて情けないんだろう。
ママのばか。病院から帰ったら、ああやちゃんて呼んでやるんだから。
母の名は「彩花(あやか)」。だから、「ああや」。
私たち、名前だけは似てるよね。ママ。それとも似せてくれたのかな。パパが? それともママが? ああ、もっと知りたい、自分のこと。聞いてみたい、産まれる前のこと。
まだあったことのない家族のこと。おじいちゃんやおばあちゃん……
話してみたい。
これから新しく一家に加わるまろ君のことも。



