「くうっ!」


 また元のうさんくさい「聖乙女」を騙るのかと皆、かたくなににらみつけていたが、修道女は別のことを語った。


「ここには元から人はいなくて、死んだ時だけ墓をつくれとやってくるのです。もう、敷地内は遺骸を埋める余地もないほどです」


「止めた方がいいんじゃない? 修道院」


 無造作に言い放ったエルナリアに、修道女は静かに否定の仕草をした。


「いつか、人は戻ってきます。そのとき教会が荒れていたらどうでしょう。寄る辺なき子羊たちが路頭に迷ってしまう」


 みな身をかたくして見守る中、ルナだけが頷いた。


「私は証になりたいのです。暗闇の中の灯火となって皆さんに尽くし、ここに人々が生き、神の御元にあって幸福だったと」


「わかります。わたくしも是非お力になりたい。あなたが聖塔への書状をしたためたなら、わたくしがお預かりして参りましょう」


「ルナ……ルナ、様」


 ルナの微笑みは、彼女の涙は本物だった。