と、表で獣の咆哮がした。


 ち、と今度はダーナの方が舌打ちした。


 その数数匹、大きさ自体は他愛もないだろう。


 しかし、ルナを守り、少女を逃し、修道女を隔離するのに一人では無理だ!
 

犬はしつこく追いかけてくるだろう。厄介だ!


 ダーナは仕方なく腕をさらした。
 そこにあるのは蛇神の印。



「さあ、始めよう……」


 彼女の誤算はここが修道院であったということだ。ここでそんなものをむき出しにしては物騒なことこの上ない。


 しかしもう、ここへくる信者の多くは死んでいる。修道女の与える神の神聖なる水も、彼女自身が真っ先に穢してしまった。金という力によって……


「さっさと眠るが良い。神の御許で、蛇神の力によって! 私がねじ伏せてやる!」


 彼女の持つ信仰は他ならぬ聖塔の力のおかげで、悪魔扱いされていた。元は人々に戦いの苦しみ痛み、激痛を治め心身を癒す神への信仰であったというのに。


「私は怖くない。私は痛くない。私は弱くない。我々は石をもて打たれた血族。許せない。許さない。神への信仰を断たれた恨み覚えよ!」