ルナはますます憤り、声を荒げた。


「彼女を、離しなさい、と言っているのです」


「おまえならブルー、いや漆黒の衣装が似合う。そこはかとない気品、これは絶品」


「生憎わたくしは白い制服をいただくことになっております。聖塔の見習いとして」


「ほう、どんな後ろ盾がおまえを守ってくれるのかな?」


「それは……」


 言えない。


 父の存在自体を知らない彼女に応えられるわけがなかったのだ。


「ルナ、こんな奴にそのようなこと、教える必要などない」


 なぜか水を滴らせてダーナがルナの前に飛び出し、男の前に立ちはだかった。


「弱肉強食だよ、おつきの小間使いさん」


 男が言うことはわかる。故に刃を用いたのだ。