「許しませんよ。人の命をなんだと思っているのです。このような紙ペラ数枚で、その娘をどうこうできると思っているのですか」


「何が不満だ。わしはこの娘を買った。もうわしのものだ。どうしようが自由」


「させません。そんな自由など、この世のだれも持ってはいない。持ってはいけないのです。金で解決するのは政治だけにして下さい」


 ち、と耳障りな音を立て、男は傲岸に言い放った。


「おまえならば、何が欲しい。金か土地か、名誉か?」


「……みんな言うことは一緒。個性さえ見せない。きっと異端と見なされると困るからなのね。そんな事実はありはしないというのに」


 自分に後ろ盾があることなど知らない、純粋な誇りと、無垢な怒りが、男の眼を焼いた。


「おまえも来る気はないか」


「ございません。それより彼女を返して」


「この黄金の髪とブルーアイズに対象的な夜闇の髪色ときらめく月のような瞳……美しいな」