がぶり、とエルナリアは男の指を食いちぎらんばかりにかみついて、気づく。


 ……男には親指と人差し指以外、指がなかった。


 火ぶくれのようだ。壊疽を起こしているようでもある。


 少女はショックを受け、瞬時に彼女は今日あったことを思い浮かべる。


 木に吊されたマリアの戒めを解いてくれて、水をつかわせてくれて、簡素だが服を恵んでもらった。


 みんな思いもしない出来事だった。


 自分一人でなしえることではなかった。もう……十分なはず。
 

 一生に一度きりだ、こんなこと。
 

 エルナリアは手を放し、抵抗を止めた。


 パアン!


 音を立ててエルナリアの頬が赤くなった。


 それをとがめるでもなく、身を縮め、見守るルナ達。


「一緒に……ゆきましょう。エルナリア、聖塔へ」
 

 呼びかけたが少女にはとどかない。


「ルナ、ルナ、どうなっているんだ彼女は?」


「今はお別れ。でもいつか必ず、また会えるから、辛い時は頼ってお願い! 聖塔へ来て」