「ここはわしの貸し切っておいた泉のはずだが」


「申し訳ございません。事情がありまして」


「ふむ、だがもう良い。穢された水にはもう用はない」


 身分の高そうな、また、傲岸不遜な態度をとる男だった。醜い影が神聖な教会を穢した。


その逆光の中で、男の姿はだれにも捕らえきれなかった。


「だが、この黄金のような少女はどうだ、どこを探してもこれほどのものがあろうか。いくらだ」


「は?」


「この娘の値段だ」


「彼女は、その、この教会に必要な者でして……簡単には手放せません」


 おもねるような視線で尋ねると、彼は膨大な札束を出してきて、


「足りるな? 今までの泉の貸し切りの料金とチップだ」


 そういって、少女を引っ張って出て行こうとした。


「まって、なんなんだよ、いきなり」


「エルナリア、そのひとについて行ってはいけない」


 再び名を呼ばれ、振り返る瞬間、少女は尻を鞭で叩かれた。


「くう!」


 叩かれたエルナリアは闘志を燃やし、彼の向こうずねを蹴り、自分の足を痛めた。


 折り目の入った紳士のズボンに足跡がついた。


「すぎた幸運は不幸のもと。彼女は確かに美しいけれど、それが善くないことを招かねばいいけれど」


「えーい、は・な・せ!」