「全ては神のなさる御業。それに、おまえ、などと呼ばれるのは気持ちの良いものではありませんね。聖乙女と言っていいのですよ」


 修道女はふふん、と鼻で笑った。


 少女は煮えくりかえって牙をむいた。


「聖乙女などこんなところにいやしない! おまえはタダの動物殺しだ」


「悪の元を断ったとして、なにがいけないのです」


 修道女はマスク越しに瞳を細くしてほくそ笑んだ。ダーナは嫌悪もあらわに、


「無神経な女だ。聖塔のものでも、遣わされた者でもないのに聖乙女とはよく言ったものだ。次は聖母とでも言い出すのか? たんに妄想か」


「騙りでしょう。目的はわかりませんが」


 言わずもがなのことを、御者が言った。ルナは頷かなかった。


「まずしい……」
 とだけ言った。