少しはもつと思うけど、このまま海の中にいるのは危険だ。 いつあぶくの中の酸素が尽きるかわからない。 地上に帰さないと。 私はあぶくをそっと抱え、水面を目指す。 なるべくゆっくりと‥それでも急いで。 「耳が聞こえなくなったら、つばをのむのよ」 これは「耳抜き」だ。 昔祖母に教えてもらったことだ。 「うん」 男の子は、キョロキョロとまわりを見回している。 私たちはゆらゆらと、水面に近づいていく。 太陽の光が強くなってきた。 もうすこし、もうすこしで水面だ。