「葉桜、丞」

俺の名前を告げたことは一度たりともない。

千鶴も知っていたし、どうなっているんだ。

「俺の名前を知っているなんてな」

「お前達は改革派にとって災厄でしかない。ここで始末をつける」

「血の気の多い奴だ」

構えをとると、妖魔が人間以上の速さで地を蹴った。

防御の型をとろうとした瞬間。

「あっち向いてホイ」

妖魔が指を動かすと型は崩され、俺の頬に拳がめり込んでいた。

「ぐお」

首がもげそうなくらいの勢いで、俺は後方へと回転しながら飛ぶ。

今ので完全に脳が揺らされた。

「しぶといな」

立ち上がろうとしたところで、頭を踏みつけられる。

「油断はしない、死ね」

手刀を作り、俺の首を狙って下ろそうとする。

「あっち向いてホイ」

しかし、背後にいた吟に気付いており、指を動かすと吟の手刀の向う方向が変わる。

そして、妖魔が回転すると同時に吟を刺そうとするが、吟も方向転換と同時に回転しながら蹴りを出して腕を弾いた。

妖魔は、一度離れると俺達の様子を伺う。

「私が、簡単に殺らせると思うか?」

「面倒くせえ奴が相手だ。だが」

握り拳を作り、構える。

「決着をつけてやる」