「すいませんねえ。私としてもあなたに一番に見せてあげたかったんですよ」

彼女が摩耶さんの瞳を見つめ続けたい症候群にかかっているなど、予想にもしませんでしたね。

これも、青天の霹靂でしょうか。

「情けは人のためならずですか!?そんな情けは私のためになりません!」

「使い方を間違って使えるところは素敵だと思いますよ」

実際は、情けは人のためではなく、自分に返ってくるからという事から、人に親切をかけておくようにという物なんですよね。

私としては情けをかけたつもりはありませんが、葵さんが思っているのであれば良しとしましょう。

「いいでしょう。どっちが摩耶さんのお肉料理をおいしそうに食べられるか、勝負するしかありませんね」

「ほう、それは奇抜な勝負ですね」

豊富な感情を持つ葵さんに勝るとは思えませんが、彼女の七色の表情を見ないわけにはいきませんね。

「何や、葵、きとったんかいな」

摩耶さんがお皿にお肉料理を乗せながら歩いてきます。

「ええ、今日は恩師摩耶さんがお肉を仕入れたと聞いた物で」

「それやったら、飛鳥の家で食べられるやんか」

「何を言ってるんですか!恩師摩耶さんの料理は恩師摩耶さんのお家でしか食べられないんですよ!」

「しゃあないやっちゃな」

机の上に置き、皿を一つ増やして肉を取り分けていきます。

「じゃあ、いただきまーす」

「ちょっと待って下さい!」

摩耶さんがお箸で肉を持ち上げようとしたところで、葵さんが止めました。

「ウチ、早く食べたいんやけど」

「摩耶さんには審査員をしてもらいたいんですよ」

「何言ってるねん。ご飯が冷めるやんか」