急いでビルに入ろうとすると、壁があるように入れない。

「結界か」

殴ってみても、結界が壊れることはない。

外から入る事が出来ないのか。

吟が無駄な魔力を使う事はないはずだから、結界も琴の仕業と考えるべきか。

それか、第三者による物か。

「クルト、頼みたい事がある」

「何だ?」

「ビルの中に入るには、お前の力が必要だ」

「オラが、役に立てるのか?」

「おうよ。俺の前にある場所に穴を開けてくれ」

「何も見えないぞ」

「見えなくてもあるんだ」

クルトが俺の前に触ると、不思議な顔をしている。

「本当だ。すげえな」

「俺にとっちゃ、厄介なんだがな」

「あの」

背後から声がかかる。

振り返ると、見覚えのある格好の者が立っていた。

「お前は」

白き鎧を着用している。

俺がロベリアと一心同体となった時になる格好だ。

背の高さは、黒き鎧を着用した者と同じのように見える。

ならば、ロベリアは俺と契約破棄を行い、新たな宿主と契約したという事か。

何かしらの事情がある。

だが、長々と話を聞いている場合でもない。