「こんな場所に仏、ね」

何ら楽しい事もないだろうし、紅い水の中で泳ぐのは気が引ける。

「君は死んだ。こればかりは変えようのない事実だ」

「そうみたいだな」

「地上の事は地上の人間や妖魔諸君に任せたまえ」

「ああ」

イヴァンを誰かが倒してくれない限り、平和は来ないだろう。

話し合いも終わってなかったのにな。

「しゃあねえな」

あるのは、もう戻れないという寂しさだけだった。

美咲とも、子鉄とも、千鶴にも、会う事が出来ない。

こちらからは見る事は出来ても、会話は出来ないのだ。

どうもがいても不可能ならば、諦めるしかないのだ。

「ここを真っ直ぐいけば、希望に出会える。そこからは、君が選択したまえ」

ラインが裂け目の中へと入り、消える。

一緒にラインの裂け目に入ったらどうなるのだろうか。

きっと、よろしくない事が起きるのは何となく分かった。

俺はラインの言うように真っ直ぐに歩き始めた。

「本当に、気味が悪いな」

そして、油断してるところで、誰かが襲いかかってくる。

「ち!」

殺しのプロのような、確実に仕留めにくるかのような動き。

だが、見たことがある。

いや、それどころか、触れ合ったこともある。

「吟!」

これが、希望か。

しかし、吟も自分の意思がなく、うつろな目をしている。

ただ、争う事だけを目的としているかのようだ。