男は針を消す間もなく、頬に針が刺さる。

「終わりだ」

自分で作った麻痺針によって、自滅する。

俺は心臓を貫くために腕を伸ばす。

「見逃しましたか?」

「何?」

男は麻痺する事無く、俺の腕をナイフで真横から差し込む。

しかし、突出した勢いは止まらず、男の片腕は胴体から離れ空を飛んだ。

「ズレたか」

麻痺していた腕が動く。

男はナイフを消したのと同様に、麻痺も消したのだろう。

俺は連撃するために、もう一発放とうとする。

しかし、急激に体の力が抜けていく。

「ぐ」

体内の魔力が急速に無くなっているのだ。

男は片腕を引っ張ると、俺の腕からナイフが抜ける。

片腕を抑えながらも、数歩下がる。

「はあ、はあ」

停止していては、命がなくなる。

「おや、さすが妖魔の方ですねえ。魔力の量も中々多いみたいで、歓心しますよ」

男は飛んだ片腕を気にする事無く、ナイフを構える。

男には、痛みがないのか。

「おや、私は痛みに鈍いんですよねえ。ですが、早々に決着をつけなければなりませんね」

俺はポケットにある魔草青汁を手にする。