段々、眠くなってくる。

虚ろな世界の中で、ロベリアは微笑む。

まるで母親のように。

優しく髪を撫でる感触が、とても気持ちがいい。

「王子様」

「ん?」

「例え、あなたが誰かを好きになったとしても、あなたの事をお慕いしたいです」

ロベリアの気持ちは解っていた。

ずっと、彼女は言ってくれていた。

でも、どうする事も、出来ない。

俺の気持ちを知っていてか、笑顔を崩す事はない。

俺の曖昧な態度が、ロベリアを苦しめているのだろうか。

「ロベリア」

「今は、ゆっくり羽を休めて」

そっと、軽く口付けをする。

彼女の甘いニオイが俺の鼻腔に広がった。

彼女との触れ合いは初めてだった。

虚ろな世界は、瞬く間に速度を上げていく。

瞼が次第に、重くなる。

「俺は、お前に、何もしてやる事が出来ない」

上げた手をロベリアの温かい手で覆う。

「王子様の温かさだけでいい。他は、何もいらない」

握った手を頬に当て、何かを感じ取っている。

「ありがとう」

ブレーカーが落ちたかのように、俺は眠りへと落ちた。