「ただいま」

「おかえりなさい」

ロベリアが出迎えてくれた。

「千鶴は出かけてるのか」

平日だし、いなくても当然だな。

無論、ジャスミンもバイトだ。

「ふう」

俺はソファーに座って、へたれこむ。

自分の肉体のみで闘う事が、どれだけ大変か。

退魔師でも限界ギリギリだというのに、妖魔になった場合じゃ、難しい。

退魔師はさすがだと思ってしまう。

「傷の手当てをします」

救急箱を持ち出してくると、不慣れながらも治療していく。

苦手なんだろうな。

不器用さは誠実さによってカバーされている。

だから、多少、痛くてもロベリアの前だと笑顔になれるのだ。

「ありがとうな」

「王子様に自由に羽ばたいてもらいたいから」

微笑みが眩しすぎる。

俺が彼氏なら、すぐにでも抱きしめて寝室に連れて行っているところだ。

でも、それはしなかった。

「少し、疲れた」

「私の足の上に、頭を乗せてください」

ロベリアの優しさなのだろう。

断る事にデメリットはあれど、メリットは皆無だ。

「解った、少し、休ませてもらうよ」

ロベリアの太ももの上に頭を乗せる。

「あー、柔らかいなあ。とても、いい具合だ」

吟がもち肌といっていただけはある。