親父はタバコを吸いながら、ジト目になって俺達を見ている。

「彼氏なら、キスをしてみろ」

何だ、この子供っぽさは。

もしかして、見抜いてないか?

俺の正体を、誰かから聞いたのか?

「いいだろう」

俺は、吟ネエと触れ合いすぎていて、麻痺していたのかもしれない。

本来ならば、ありえない事だと思う。

自分の唇で軽く千鶴の唇に触れる。

「む!」

千鶴は目を見開いて、驚愕していた。

まさか、自分の兄にキスをされるとは思ってもみなかっただろう。

「自分で言っておいて、心のダメージがでかい」

親父は肩膝をつきながら、苦しそうな顔をしている。

「これで解ったろ」

唇を離した後の千鶴の顔は真っ赤になっている。

これ以上はなしだ。

「蛍、そんなところで倒れてたら邪魔だろ。行くよ」

背後に現れたよう子に襟を持たれて引っ張られていく。

「ふう、勢いとはいえ悪かったな」

千鶴は固まったままだ。

「ど、どうした?」

「何でも、ない!」

そして、千鶴は墓場から、走って出て行ってしまった。

「やりすぎた、な」

風を感じながらも、自分のした事を後悔する。

後で謝った方がいいだろう。