どこにいるのかも解らないし、何を考えているのかも解らない。

ただ、イヴァンは湊さんのように複雑な事で攻めて来る事はないかもしれない。

くるとすれば、圧倒的な火力を用いて、何かを起こすという事か。

いつでも、構えておけるようにしておかなければならないな。

「でも、しばらくは傍にいると思うよ」

「本当?」

「まあな」

「良かった」

話だけでしかしらないというのに、本当の兄のように慕ってくれる。

本当の兄だけどな。

「でも、お前も彼氏の一人くらいはいるだろ。俺は邪魔でしかないと思うんだがな」

千鶴は、すでに中学生ではないのだ。

一人の女性として育った以上、男性と出会って恋をする事もある。

俺は、妹の彼氏を認めないわけではない。

きっちりした男ならな。

「いないよ」

「ここにいる!」

現れたのは、無精ひげを生やしたコートのおっさんだ。

「ふ、千鶴の彼氏といえば、俺しかいないだろう」

「あんた、自分の娘に対して何を言ってるんだ?」

俺は親父に対しては、真実はまだ言っていない。

親父に対して、別に言う必要もないだろうと判断したからだ。

しかし、三親等内の近親相姦をした俺が言える台詞ではないのだがな。

「何?お前が千鶴の彼氏か?」

「ああ、彼氏だ」

肩を寄せ、近づける。

「え、あの」

「調子に乗ってるからな。少しばかり、ダメージを与えるのも悪くないぜ」