掴もうとした腕で弾く。

女は驚いた顔をしているが、すぐに怒りの篭った顔に戻る。

「あなたとお話している暇はないの。言葉、解る?」

何ら悪びれている様子もない。

「お前、葉桜千鶴を知ってるな」

「知ってたら何?あなたには関係ないでしょ」

「何だと!新しい女を囲っているのか!?」

「黙れ!」

蹴飛ばして、女に向き直る。

「お前がここにいるという事は、近くにいるという事か」

一体、何を目的で葉桜千鶴が廃墟にいるのか。

マリア=マティーとの関連性は今のところはない。

廃墟に来たのは葉桜千鶴が目的ではない。

放っておくべきか。

「用がないのなら行くわよ」

「待て、マリア=マティーという女を知らないか?」

「さてね」

女はとぼけた仕草を見せながら、去っていく。

俺は、再び歩き始めた。

情報がないから、どこに行けばいいのか。

さっきの男達を捕らえて、情報を吐かせるべきだったな。

「ち、面倒くせえな」

もう一匹、ネズミでもいてくれれば、俺としてもありがたい。