琴の家は天国の島付近にある。

別段、距離は気にしなかった。

今は、どこにも行く当てなんてない。

ミールオルディンの事は、あまり考えたくはなかった。

笑顔でいるにしろ、吟が死んだ直後に戦える自信はない。

「ふう」

隣には、目を腫らした琴が無言で歩いている。

「琴」

「何にゃ?」

「琴と吟って、いつから知り合ってたんだ?」

「琴の事、気になるにゃ?」

「まあな」

少し改変されているが、気にせず進めよう。

「吟ちゃんの彼氏だから、教えるにゃ。あ、その前に吟ちゃんの彼氏の名前はなんていうのかにゃ?」

「あれだけ名前を呼ばれてたはずなのに、覚えてないのかよ」

「ごめんにゃ、琴は、駄目なやつにゃ、ふ」

涙を溢れさせながらも、不幸につなげようとする。

やっぱり、琴は変わりないようだ。

「解った解った。葉桜丞だよ」

「格好いい名前にゃ」

そういいながら、俺の腕に組み付いてくる。

余裕はないのだが、笑顔を作る。

きっと、吟がいなくなって寂しいのだろう。

「あ、質問だったかにゃ。琴のスリーサイズは」

「質問の回答が丸っきり別物になっているんだがな」

「こ、琴の事じゃないにゃ?」

「吟と琴の関係について聞いたつもりなんだがな」