俺は龍姫に転移してもらう。

夜の世界の学校付近。

見上げると、空には月が浮かんでいる。

月に行こうと思えばいける。

でも、死後の世界には、死ななくちゃいけない。

出会えるかどうかも解らない。

「おっと」

きっと、暗い顔をしていたに違いない。

吟に怒られるな。

「しかし」

周囲は静けさが漂っている。

随分と懐かしく感じる。

「吟ちゃんの彼氏」

背後には、褐色の女性が立っている。

喋り方からして、琴だろう。

内緒にしてくれといったのに。

それとも、俺達の会話を聞いていたのかもしれない。

そういえば、吟が死んだのに、不幸といわなかったな。

我慢、したのかもしれない。

「どうした?」

「吟ちゃんの彼氏に渡したい物があるにゃ」

「ん、何だ?」

「それは、琴のお家に行かなくちゃないにゃ。でも、受け取って欲しいにゃ」

どこへ向うだとか、決めていない。

一人で歩きたい気分だったが、何か気になった。

「いいよ、行こうか」